※2016年11月らくうぇるインタビュー記事を引用

千早赤阪村の静かな住宅街に溶け込むようにして建つのは、「家工房」と書かれた木製のプレートが掛かる一軒家。
道路に面しているのは、ポーチと呼ぶよりは、自然と敷地内へと導いてくれるかのような通り土間。一歩足を踏み入れると、右手にはお家の玄関口、そして左手には離れのようにして設けられた独立型の書斎が見える。
そして正面には植栽の美しい中庭が心地よい開放感を演出してくれている。

「ここはモデルハウスでもあり、実際に僕たち家族が住んでいる家でもあります。
コンセプ卜は『自然を感じる家』。
内装にはさまざまな種類の木を使っていますが、それぞれ木の特徴が生きるようにと工夫しました。
また、リビングからは中庭の木々がよく見えるので、生活のなかで身近に四季を感じられるんです」

そう話してくれるのは、2014年4月に工務店「家工房」を創業した一級建築士の渡部要介さん。
さっそくお家のなかへ入らせていただくと、途端に木の爽やかな香りに包まれた。
「新築ですかっ」とお聞きするも、「いえもう2年が経ちました」とのこと。
木の使い方や組み方で新築時のようなこの新鮮な香りがこれほどに続くのかと驚いた。
といっても、特段変わったことをしているわけではないという。「素材は自然に近いものを使い、間取りもシンプルに、そして日本の風土にあった普からの知恵を取り入れる。それを基本にしています」と渡部さん。

また、大きなガラス窓の向こうに見えるのは先ほどの中庭。
一葉が芽吹いてから、実をつけ、落葉するまでの、そんな春夏秋冬の刻々とした移り変わりを、どこへ出向くでもなく、朝起きてリビングに入るだけで目にすることができるのだ。
それだけで、なんとも心豊かな一日を送れそうな気がする。

「自然を感じる家というのは、僕の家造りの一つのテーマでもあります。庭木を眺めるだけでも四季を感じられますが、お子さまは日々の水やりといったお世話を通して、より感受性を育むことができるのではないでしょうか。また、庭と室内をどうつなぐかと考えた時、軒下にリビングからつながる縁側を設けるのも一つの方法。縁側で洗濯物を干したり、お茶を飲んだり、お昼寝したり、リビングにいる家族とも分断されることなく、ゆったりとした時間を満喫することができます」

自然を感じ、家族の気配を感じられる家、それが「家工房」が目指す家だ。
「仕事や学校などから家族が帰ってくる場所が家です。だからこそ、ただ豪華にお金をかけて造ればいいというのではなく、そのご家族にとって何が大切なのか、そういったことをお話して考えながら造っていくのが、私たちの家造りです」

渡部さんが、家というものに興味を示しだしたのは小学3年生のころだという。
「その頃から、白い紙に自分なりに家の設計図を書いていたんです」と笑う。
高校卒業後に建築の専門学校へ進み、建設会社に就職した。
「さあ、設計図を書ける、と胸が躍ったものの、やはり新人ではまだまだわからないことも多かった。勉強のためにもと、まずは設計ではなく現場監督という業務を担当することになりました」そして5~6年ほど現場監督の仕事をしているうちにすっかりその面白さにとりつかれてしまう。
「図面を職人さんに伝える責任、そしてそれが形になっていく過程に関われるという醍醐味がある。
とてもやり甲斐を感じ、このまま現場監督の仕事をしたいと思うようになったんです」

また、仕事に打ち込むうちに、「もともと設計をするのも好き。
現場で職人さんたちと話をするのも好き。可能であれば、自分で最初から最後まで一貫して担当したい」という思いが募り、独立を考え始めた。

そして、独立を実現したのが14年春。
「生まれ育った地元で愛される工務店を目指したい」と、千早赤阪村に事務所を置いた。
独立して仕事をしていく上での不安はなかったのだろうか。
「まったくなかったといえばウソになりますが、なんとかなるという前向きな気持ちでした。
でも1年間は仕事がなくて暇でしたが、少しずつ地域の方から応援していただくようになってきて、今ではここを拠点にして本当によかったと思っています」

地域の人たちとつながることができたのは、渡部さんの真面目な仕事ぶりはもちろん、「おうち開放」という企画をもう2年も続けていることも大きいだろう。
「おうち開放」とは、「月1回、毎月第1土曜日にどなたさまでもこの家に自由に遊びにきてくださいという日を設けています。お菓子を用意していますので、休憩しに来られるだけでもいいですし、どなたかとお待ち合わせに使っていただいても結構です。お子様のおもちゃや絵本、お昼寝スペースもありますよ」と、二級建築士でもある妻の裕子さん。
「モデルルーム見学というと、家の購入を考えている人しか来にくいでしょうし、営業されるのではと不安もあるかと思います。
でも、この『おうち開放』はそんな趣旨ではないのでお名前も連絡先もお聞きしません。
地域のコミュニティーつくりの一環として行っているもので、そのなかで気軽に家づくりのヒントを得ていただいたらうれしい。
「家を建てる予定の有無に関係なく、気軽にお越しください」この「おうち開放」は、渡部さんのお母さんが地域でずっと続けていた活動でもある。
それを見て育った渡部さんは、家には人と人とをつなぐ役割があると感じているのだ。
「子育て世代から高齢者まで、地域の人が顔を合わせて話をする。そんな機会が少しでも増えていけばいいなと思います。また、地域で暮らし続け、働き続けるということは、生活者としての姿勢も社会人としての姿勢もつねに見られているということ。
信頼するに足る存在であらねばと、とても気が引き締まります。
地域の方との信頼関係を丁寧に築いて、トイレの補修から、家一軒の新築まで『何かあれば家工房に相談しよう』と思っていただけるような工務店になりたいですね」